January 10 2023
石本崇胤特任准教授 (消化器がん生物学)の研究成果が日経新聞に掲載されました。
論文表題:高度線維化を伴う難治がんに対する免疫チェックポイント阻害剤の効果を高める治療標的を解明 ーストローマル・リプログラミングによるがん治療開発に向けてー
著者:Takahiko Akiyama, Tadahito Yasuda, Tomoyuki Uchihara, Noriko Yasuda-Yoshihara, Benjy J.Y. Tan, Atsuko Yonemura, Takashi Semba, Juntaro Yamasaki, Yoshihiro Komohara, Koji Ohnishi, Feng Wei, Lingfeng Fu, Jun Zhang, Fumimasa Kitamura, Kohei Yamashita, Kojiro Eto, Shiro Iwagami, Hirotake Tsukamoto, Terumasa Umemoto, Mari Masuda, Osamu Nagano, Yorifumi Satou, Hideyuki Saya, Patrick Tan, Hideo Baba, Takatsugu Ishimoto
掲載誌:Cancer Research
DOI:https://doi.org/10.1158/0008-5472.CAN-22-1890
【概要説明】
消化器がん生物学(研究責任者:石本崇胤特任准教授)の秋山貴彦研究員、安田忠仁研究員、内原智幸研究員、大学院生命科学研究部消化器外科学の馬場秀夫教授らの研究グループは、国立がん研究センター、慶應義塾大学、藤田医科大学、京都大学、シンガポール国立大学との多施設共同研究により、胃がんでは血小板由来増殖因子 (PDGF) - PDGF 受容体(PDGFR)シグナル(以下、PDGF - PDGFRシグナル)による高度な線維化が起こり、免疫チェックポイント阻害剤の効果が弱まることを明らかにしました。さらに、PDGFR阻害剤と免疫チェックポイント阻害剤の併用療法は、悪性度の高いスキルス胃がん・膵臓がんのような線維化腫瘍に対して、より高い抗腫瘍効果を発揮することが分かりました。
本研究の成果は、米国学術誌「Cancer Research」(オンライン版)に2022年12月22日に公開されました。
なお本研究の一部は、JST 創発的研究支援事業(FOREST)の研究課題「シングルセル・マルチオミックス解析による線維化シグナルネットワークの全貌解明」(研究代表者:石本崇胤 JPMJFR200H)の一環として行われました。そのほか本研究は下記研究支援を受けて実施したものです。
【用語解説】
※1 がん関連線維芽細胞(Cancer Associated Fibroblasts: CAFs)がん微小環境(がん細胞の周りの組織)を構成する線維芽細胞(がん微小環境を構成する線維を産生する細胞)であり、がん細胞の悪性化に関わるさまざまな因子を分泌することが知られています。
※2 血小板由来増殖因子(PDGF) - PDGF 受容体(PDGFR)シグナル
血小板由来増殖因子(PDGF)は血管平滑筋細胞や線維芽細胞の増殖因子として知られています。PDGF受容体(PDGFR)は線維芽細胞などの間質細胞に発現しており、PDGFが作用することで、がんの進行・進展といった影響を及ぼします。
※3 免疫チェックポイント阻害剤
私たちは本来免疫細胞によって発生したがん細胞を排除しています。しかし、がん細胞は免疫細胞にある免疫チェックポイント分子を利用し、攻撃を回避・増殖することができます。免疫チェックポイント阻害剤はこのがん細胞の働きを抑制することで免疫細胞の力を保つ働きがあります。